洪聖は海の神であり、中国南方沿海の漁民に篤く信仰されている。言い伝えに拠ると、洪聖大王は唐朝の重臣で､姓は洪､名は熙、広東・番禺地方の長官を務めていた。天文地理に精通し、多くの行商人や漁民を助けたが、惜しくも短命であった。沿海漁民は彼を記念し、またそのご加護を賜りたいということで、廟を建立し、そこに彼を祀った。そして唐朝の皇帝は洪聖に南海広利大王の称を与えたととのことである。         大角咀福全街の洪聖廟は、元は深水埔の界限街と大角咀道が交わるあたりの福全郷にあったが、1928年、政府の区画整理により福全郷一帯は取り壊され、郷内の洪聖廟は新しい街道沿いに遷された。そして福全郷を記念し廟前の街道を福全街と名付けた。洪聖殿内には光緒七年（1887年）の銅鐘と1930年の廟落成時の扁額、そして修築時の碑文が保存されている。主祠に南海広利王と称される海の神・洪聖が祀られ、また脇には何仙姑、観音、女媧、包公、北帝、地蔵、準提、黄大仙が祀られている。毎年陰暦二月十三日は洪聖誕生の日とされ、昔日は盛大な誕生祝賀活動が行なわれていた。         現所在地に遷されてからは東華三院により管理されており、また古物諮詢委員会より三級歴史建築物に認定されている。   何仙姑 ・・・ 神話中の八人の仙人の中の唯一の女性。手に蓮の花を持っている。   女媧 ・・・ 五色の石を練って天を補ったという神話に登場する女帝。   包公 ・・・ 宋の時代の公明正大であった裁判官、名は包抷。   北帝 ・・・ 又の名を玄天上帝といい、悪霊を退散させたという伝説上の3000年前の皇子。   準提 ・・・ 仏教の諸仏の母とされている。千の眼、千の手、千百様に変身し苦難に会っている人を救済したという。   黄大仙 ・・・ 俗名黄初平、幼少の頃は家は貧しく８歳から羊飼いをしていたが、１５歳の時に赤松山で仙人に出会い、修練を経て、悟りの果を得た。